ゴー宣ネット道場

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切通理作
2010.10.25 13:47

ひろゆきVS小林よしのり 観戦記

     

  「修身という言葉を知っていますか?」という問いに、

  初耳 330

  はい 41.8

  いいえ 25.1

  という回答が出ました。
  この間のニコニコ動画での小林よしのりさん、ひろゆきさんのトークが始まる前のアンケートの結果です。
  
  「いいえ」と「初耳」を合わせたら58.1%になります。

  ひろゆき氏も、「修身」という言葉は自分の親の世代が、さらに親の世代から教えられたものでしょ?というぐらいのリアリティだと語っていました。

  でもそんなひろゆき氏も、「よしりんに『友だちんこ』をやってほしい」という視聴者の質問はスルーし、すかさず書き込みに「アホか・・・・・」と記しています。ちゃんと、していいこととそうでないことを分けているのだと思いました。
 
  ひろゆき氏は目の前の小林さんとトークしながらパソコンに書き込みをし、ニコニコ動画を視聴している人たちの反応も見つつ時々つぶやいてメッセージを投げかけていました。

  目の前の小林さんの話をちゃんと受け止めながら、その場だけでなくパソコン画面を見ている人にまで気を配る聖徳太子ぶりに「さすが」と思いました。

  「修身とは何か」というテーマに対しても、「身を修める=等身大」というところから、背伸びせず、またおちゃらけることもなく、まさに等身大に小林さんの話を聞きだしていく。

  若い時はつい権威に反抗することに魅力を覚えてしまうと小林さんが話した時に、すかさず小林さんがかつて捉われた破壊的な感情に焦点を当て、それは人間にとってそもそも必要なのだと思いますかと問う、ひろゆき氏。鋭い!と思いました。

  小林さんは「高校時代ぐらいまでには権威への反抗も必要」と応え、ひろゆき氏が「なにかを闘い取っていくことは覚えておくべき」と、ジャンルは違っても百戦錬磨の世界を生きてきた者同士の共振を感じました。

  そして小林さんに、なぜ社会や他人のことが気になるのですかという本質的な問いを投げかけます。
  これは『ゴーマニズム宣言』の熱心な読者ではない人だったら、小林さんに対して必ず持つ疑問ではないでしょうか。
  
  ゴー宣道場で参加者からいつも一回は出される「社会的なことに関心のない人にどう言葉を投げかけていくのか」という問いの、ちょうど裏返しともいえる本質的な問いといえます。

  それに対して小林さんが、マルクス主義のお父さんからの影響と、喘息で苦しんだ疎外感、孤独感を漫画を描くことで克服してきた子ども時代を語ることで応えていました。

  苦しんでいる人、阻害されている人に対して、どうしても他人事とは思えないという意識が育ってきた背景が肉声で語られ、まさに等身大の小林さんが見えました。

  このあたりで、小林さんってこういう人だったんだ・・・・・というニコ動の書き込みが増えました。おそらく『ゴー宣』ヘビー読者でない人たちにとっては、もっとゴリゴリの教条主義者に見えていたのではないでしょうか。

  考えてみれば左翼だ右翼だといがみあっていても、そもそも社会的な関心というのは、個人の人生の中で他者を切り捨てられないからこそこだわるものなのであって、そこから問い直す機会があるからこそ、若い人にも開かれた言葉になるのだなと思いを改たにしました。

  小林さんが来月、砂澤陣さんを迎えてアイヌのことをゴー宣道場でテーマにするのも、日本の他の地域の人からはわかり得ない視点というものに対する視座なのだと思います。そういう視点の捉え返しを、常に切り捨てないで持っている柔軟さが、今回のひろゆき氏とのトークにもあらわれていました。

  また、世の中お金だけじゃないという部分で、労働それ自体に人は喜びを感じているという小林さんの話に、ひろゆき氏が、かつて刺身にタンポポを乗せるバイトをしていて、短時間でそれを出来る自慢のスキルは特にその後の人生で使えないけれど、自分の中に残っている・・・・・という話をしたのも面白かったです。

  最初ひろゆき氏が遅刻してきたとき、僕は以前ひろゆき氏が出るというイベントに行ったとき、結局最後の五分しか来なかったことを思い出し、「ひょっとして、始まらないんじゃないか」と不安になりましたが、結果的にはとても得るものが大きいトークになったと思います。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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