ゴー宣DOJO

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切通理作
2012.1.17 02:14

ネットとリアルの境がなくなる時、世界はどう変わるのか!?

第21回ゴー宣道場『ソーシャルメディアの罠』は
ITに詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さんを
ゲストにお迎えしました。

お話を伺って、
佐々木さんが良心的な方だと思ったのは、
たとえばTPP推進論者のある部分の人たちような、
甘いことを言わないところです。

ネットにおけるグローバリズムで
みんなが幸せになれますよ……といった
甘言や詐術を弄さず、
クールなまでに直截。

従来、インターネットに対する評価は、
「違う世界の人が出会いやすいメディア」で
「しかし<画一化>を促す危険性がある」
というものだったのではないでしょうか。

そんな「思い込み」に対し、
実はインターネットというのは
自分と似た人、似た階層の人とこそつながりやすいものであり、
そこには普遍も全体像も存在しないと、
佐々木さんは言います。

知的で富める者はそうした者どうしでつながり、
たとえばFacebookでの交流が時には商談にもつながる。
ますます人脈が広がり、富んでいく。

貧しく無識な層どうしはたとえばオンラインゲーム
のような、社会的価値と関係なく出会える
セッティングされた人間関係に逃避しながら時間を費やし、
その中のつながりから抜け出せなくなり、
やがては課金制に手を出し、
もともと貧しいのにますますお金を吸い上げられていく。

この二極が象徴的だと、佐々木さんは言っていました。

リアル世界の格差はネットにおいても溶解することはなく、
残酷なまでにそのまま反映されている。

そして佐々木さんはべつにインターネットの伝道師ではない。
終身雇用や専業主婦で一生安泰にやっていけると信じ込んでいる人
にとって、見ず知らずの人とソーシャルメディアで
つながる必要なんて感じなくても当然だと、おっしゃっていました。

佐々木さんのお話は、日本にはもう中間層は存在せず、
企業や地域などの中間共同体も崩壊の方向にあり、

個人が個人と直につながり、己の能力、条件、趣味嗜好を
的確に伝え合って、手を結べる人たちはその都度
出会いやすくしておいた方が、これからの時代、
生き抜いていけるよ・・・・・・ということなのだと思います。

そしてその、「もう存在しない」「だんだん崩壊していく」
中間層や共同体それ自体が、ゴー宣道場で「公論」として
守っていこうとしていることなのではないでしょうか。

当日来られた方々のアンケートや
道場MLの皆さんの感想は、
師範方にいわれるまでもなく、
そこに目を向けたものが多く、
道場の「公論」を再認識する上で、
非常に良かったのではないかと思います。
 

佐々木さんは、国家というものは
歴史の中のある時期に有効だった枠組みであり、
現在では「同じ知的水準や経済状態」の
人々が国境を超えてつながる時代に
移行しつつあると著書に書いています。

これはよしあしではなく「現状」であり、
そこを読み違えると
生き残れないということなのでしょう。

またネットにおけるグローバリズムは
たとえ発祥地がアメリカであっても、
もはやアメリカにさえ特権的に
富や雇用をもたらす構造になっていない。

つまりそこに悪玉を見出しても意味がなく、
システムそのものは非人格的である。

佐々木さんの示したこの枠組は、
道場の外を包む「グローバリズムは<現状>
および<確実に到来する未来>
であり、そのことの批判ではなくその中で
どう生き残っていくかということしかない」
というものの見方に対して、
どう乗り越えていくべきなのかという問題を、
より明確にしてくれたと思います。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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テーマ: ゴー宣DOJO in広島「原爆の悲惨さはなぜ伝わらないのか?」

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