ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2013.1.22 01:04

「泉美木蓮のはげしい古典朗読会」を覗いてきた

1月20日、ブログで見つけた
「泉美木蓮のはげしい古典朗読会」に参加しようと思い立つ。

泉美さんとは、ゴー宣ネット道場の新しい有料コンテンツ
「古事記ワンダーランド」を、一緒にやることになっている。

泉美さんが、古事記をどんな風に読み解いておられるのか、
その一端でも知っておいた方がいい。

それに何より面白そうだ。

そう思って、予約なしで出かけることにした。

会場は阿佐ヶ谷。

これまで1度も行ったことがない街だ。

少し早めに行ってブラついてみよう。

新宿で乗り継ぎのため一旦、
駅を出て地下街を歩いていると、
小さな古書展をやっていた。

フラフラと寄り道。

滝瀬爵克『伊勢物語私論?みやびとその文学性』と
『文芸読本 万葉集』を購入した。

阿佐ヶ谷に着くと、まず会場の古書カフェ
「夜の午睡(よるのひるね)」の場所を確認。

さぁ、阿佐ヶ谷を探索しようと歩き始めると、
偶然、向こうからやって来た泉美さんとばったり。

「あとで朗読会に参加しますから」と声をかける。

泉美さんは「まぁ、恥ずかしいです」と答え、そのまま別れた。

古本屋を見つけ、
写真集『東大全共闘1968?1969』(渡辺眸)を買う。

岩波文庫の倉野憲司校注
『古事記』があったので、ついでに求めた。

もちろん既に持っているが、
朗読会の時、手元にあった方がいいと考えたからだ。

岩波文庫は訓み下し文だけでなく、
原文も収めているので好都合だ。

さて、開場時間になった。

夜の午睡に赴くと、店の前で何人か待っている。

あれれ?先頭で待っている若者に
「もう開場時間だけど、まだ開かないんですか」と尋ねた。

彼は心許なそうに
「そうですね、もう開いているかも知れません。
でも確認してないんで…」との答え。

私は優しげに頷いて(君は何故、真っ先に確認しないんだ)
という心の中の言葉を呑み込み、そのまま店内に入った。

泉美さんと、朗読会の相棒の俳優・高橋一路さんが声をあわせて
「いらっしゃい」と迎えてくれた。

外で待っていた人達も次々に入って来る。

奥ゆかしい人達だ。

やがて店内はいっぱいに。

定刻となっていよいよ開演。

出し物は「豊玉姫と山佐知」「海佐知と山佐知」
「豊玉姫の出産」「神倭伊波礼毘古命」の4本。

“目玉”は何と言っても、
山佐知と豊玉姫の性交の過剰なまでのリアルな描写。

泉美さん自身の脚本と主演になるこの場面、
なかなかお値打ちかも。

まぁ、私は一瞬、娘も連れて行こうかと思いながら、
止して良かったと胸を撫でおろしていた。

しかし、この濡れ場の異常な盛り上がりを更に越えて、
豊玉姫の出産の場面に圧倒された。

私自身は3人の子供がいるが、出産の際は全く蚊帳の外。

近頃、旦那も出産に立ち会うなんて、
神話ではタブーとされていたことが流行っている(のかどうか)
ようだが、私には無縁。

だから泉美さんの迫真の演技には、
思わず手に汗を握り、ハラハラして、
ほとんど狼狽えそうになった。

これは凄い。

さすがに経験者、一児の母。

この場面だけでも、来た甲斐があったどころか、
オツリが来る。

また、古事記の話の流れを大胆に組み換えて、
海佐知と山佐知のやり取りからではなく、
海底での山佐知と豊玉姫の性交から話を始めた
ドラマトゥルギーの手際も見事だ。

更に、「海さち・山さち」神話には、
山佐知が釣り針を探すために海底を訪れながら、
何故か「3年」もそのことを放置していた、という謎がある。

この謎を真正面から受け止め、
泉美さんらしい謎解きをされていたのにも、感心した。

全体を通して、古事記をよく読み込んでおられることが窺える。

その上で、泉美木蓮バージョンに仕上げてあって、
面白い。

話は、古事記中巻の冒頭、
神武天皇の物語の大和平定の手前まで。

次回が楽しみだ。

終了後、泉美さんが自分で描いた「おまぐわい」カードなるものが、
限定15名の希望者に配られた。

このカードは、男女の神さまが性交している姿を、
モザイクなしで赤裸々に描いたもの。

泉美さんは「このカードを持っていると、良いことがあるよ。
おまぐわい(性交)出来るよ」と言って配っていた。

私ももちろん、頂いた。

おじさん、おばさん達だけでなく、
若い可愛らしい女の子達も積極的に貰っていたのは、
やや意外だった。

むろん、だからと言ってその子をナンパしようなどと不埒なことは、
考えなかったが。

ふと見ると、開場時間が過ぎても店の前で先頭で待っていた若者が、
欲しそうな顔でもじもじしている。

「君もカード貰ったら」と声をかけると、
「ええ」と心許なそうに答える。

私が泉美さんからもう1枚、カードを受け取り、彼に渡すと、
いかにも嬉しそうにしていた。
(早く性交できるといいな)という心の中の言葉は当然、
呑み込んだ。

その後、何人かそのまま店に残って雑談。

ゴー宣道場の参加者も来ていた。

私は感想として泉美バージョンの面白さを述べた後、
山佐知と豊玉姫の「まぐわい」はただ目を合わせること、
見つめあうこと(によって心を通わせること)で、

じつは性交ではないことを、
大国主神の神話に出てくるスセリビメの例と比較しつつ、説明した。

あくまでもプラトニックラブで、セックスではない、と。

ただし、イザナキ・イザナミ神話では、
性交をはっきり「みとのまぐわい」と表現している。

更に、後には本来の意味から展開して、
性交を意味するようにもなる。

古語辞典なども「まぐわい」の語義として、
普通に「目と目を合わせ、心を通じること」と
「性交」を併記している。

だから、誤解しても仕方がない。

しかし、古事記の用法は違う。

イザナキ・イザナミの場合は「みとの」がついている。

ミトというのは御門(みと)の意で、性器を指すと考えられる。

だから、もともとは「みとの」プラス「まぐわい」で性交なのだ。

スセリビメや豊玉姫の場合、まぐわいの原文は「目合」。

その後に性交を意味する「婚」(あう、まく)という語が出てくる。

だから、それらの「まぐわい(目合)」は
性交と受け取るべきではない。

古事記を読むと、速攻で性交に及ぶ「肉食系」の
スセリビメ(出会って、見つめあったら即、性交。
さすがスサノオの娘!)と、
相手に好感を抱きながら、
父親の了承があるまで性交を控える、
慎ましやかな豊玉姫が、
対照的に描かれている。

またそれとは別に、
山佐知が身につけていたのは、
赤玉(琥珀)ではなく白玉(真珠)だった、
みたいなディテールに及んだ話もした。

泉美さんは優しく「勉強になります」と言って下さった。

けれど、他は誰も聞いてないか?

皆さんは、奈良限定販売の神武天皇のビックリマンシールの
話題などで盛り上がっていたようだ…。

(それにしても、この一文で何回「性交」って言葉使ったんだ?!)
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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