ゴー宣DOJO

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切通理作
2013.10.2 01:42

『風立ちぬ』で日本人の矛盾にブチ当たれ!

      「宮崎駿は一九四一(昭和十六)年生まれ。子どものころは戦争中。だから、宮さんの言葉を借りれば、物心ついたときに絵を描くとなると、戦闘機ばかり。でも、一方では大人になって反戦デモにも参加する。相矛盾ですよね。
 もしかしたら、それは彼だけの問題じゃなく、日本人全体が、どこかでそういう矛盾を抱えているんじゃないか。まんが雑誌とかで、戦争に関係するものをいっぱい知っているわけですよ。戦闘機はどうした、軍艦はどうした、とか。でも思想的には、戦争は良くないと思っている。
 その矛盾に対する自分の答えを、宮崎駿はそろそろ出すべきなんじゃないか。僕はそう思った。年も年だし。これはやっておくべきじゃないか、と」
 (2013年5月9日、東京新聞より)

  これは、宮崎駿とは三十年来プロデューサーとしての付き合いがあり、スタジオジブリとしてともに数々の作品を生み出してきた鈴木敏夫が語る、『風立ちぬ』を企画した経緯です。彼の言葉に「矛盾」というキーワードがあることに気付いた人も居るでしょう。

 そう。先の大戦という<負け戦>体験を抱えた日本人の一人としての「宮崎駿のどうしようもない<矛盾>を語ろうではないか!」という次回道場に向けた小林よしのりさんの呼びかけ。実はこれは(少なくともプロデューサー側からすれば)『風立ちぬ』という映画の企画意図そのものだったのです。

 宮崎駿が近年の日本での刊行の後推しをしたと思われる、イギリス軍の爆撃機に乗り込んで空爆した少年兵を主人公にしたロバート・ウェストール作の小説『ブラッカムの爆撃機』。その「解説」を漫画の形で描いた宮崎駿は、自分がもし、あと数年早い時代に生まれていたら、特攻隊に志願していた可能性もあれば、爆撃機で一般市民を空爆していた可能性もあると認めています。

 公の役に立ちたい「少年の忠誠心」は、戦後社会で出口を失っていたけれど、いつも、それは持っていたと。

 しかし『風立ちぬ』は『ブラッカムの爆撃機』のような戦闘機乗りの映画でもなければ、爆撃機に乗った者の映画でもありません。

 戦闘機を設計した人間・堀越二郎を主人公にしています。ちなみに二郎が夢の中で出会うカプローニ伯爵のカプローニ社は、爆撃機の生産でも知られています。

 堀越二郎は少年時代、いじめられていた者を多勢に無勢の状況から助け出します。そして自ら飛行機乗りになる夢を見ます。「少年の勇気」が全身に充満していたといえましょう。

 しかし、視力の問題が彼を飛行機乗りの立場から遠ざけます。ここで二郎は、戦争の時代に生まれながら、戦闘員として直接参加するという道ではない方向に分岐します。

 ここで宮崎駿は、主人公の立場を「アニメ監督」であり「アニメーター」でもある自分自身に引きつけたのではないかと、僕は思います。現地で直接行動しなくても、ペン先からイメージを具現化せしめる。その向こうには、生身の現実がある。

 宮崎駿は、自分の作っていたアニメを、現実とは関係のない、単なるファンタジーとは考えていなかった。それは多くの人々の中に確実にイメージを生み、鼓舞する力がある。

 だからこそ、それを生み出す自分への言い訳も許されない。本当は戦争が嫌で、民間機を作りたかった・・・・・・・などと言って主人公をかばうつもりなどもないと、企画書段階から宣言していることにも、それは表われているのではないでしょうか。苦悩や葛藤を混在させて、主人公の行動を現代の人間の価値観から見ても感情移入しやすく配慮するということを、はじめから禁じ手にしているのです。

 つまり『風立ちぬ』は「反戦主義者」の宮崎駿が「言い訳」や「後付けの反省」抜きで、あの戦争の時代を、「少年の勇気」を基底にもってまっすぐに生き抜いた主人公を描く・・・・・・という、見ようによっては<矛盾>そのもののような映画なのです。

 この『風立ちぬ』は、果たして現代の我々から見てまったく感情移入の出来ない、狂信的な作品なのかどうか・・・・・それはまさに、いまの日本人一人一人に問われていることなのではないでしょうか。

 それはもちろん、日本人のあり方を常に考え続ける『ゴー宣道場』のテーマとしても、無視できないものであることは間違いありません。


第38回ゴー宣道場
「『風立ちぬ』から現代を考える」

平成25年10月13日(日)午後1時 から
『人事労務会館』 にて開催します。

「人事労務会館」
(住所:東京都品川区大崎2-4-3 )は、
JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・りんかい線
『大崎駅』 の 北改札口 を出て左へ、
「西口」 側の左階段を降りて、徒歩3分です。

毎回、会場の場所が分からず迷われる方が、多くいらっしゃいます。

人事労務会館のHPにて、場所をよくご確認の上、ご来場下さい絵文字:重要
(HP掲載の、駅から会場までの地図を印刷し、持参されることをオススメします )

詳しくは、 “ こちら ” でどうぞ。

HP上の申し込みフォームからも申し込み可能です絵文字:重要絵文字:パソコン

上 ↑ のHPメニュー「道場参加申し込み」もしくは下 ↓ の申し込みフォームバナー(画像)
クリックして、申し込みページにお進み下さい絵文字:よろしくお願いします
入力必須項目にご記入の上、お申し込み下さい絵文字:重要絵文字:メール

お申し込み後、記入されたメールアドレス宛に「申し込み確認メール」が届きますので、
ご記入内容に間違いがないか、よくご確認下さい。

申し込み〆切後、当選された方にのみ「当選メール」を送らせて頂きます。
当選された方は、道場当日、
その「当選メール」をプリントアウトの上、会場までご持参下さい。

 道場参加申し込みフォーム

引き続き、往復ハガキでの応募も受付けております絵文字:重要絵文字:記念日


入場料は、お一人1000円です。

参加ご希望の方は、

往復はがき に、『第38回参加希望』 と明記、

さらに、


1. 
氏名(同伴者がいる場合はその方の氏名と続柄・関係など)

2. 住所

3. 電話番号
4. 年齢

5. 
職業(学生の方は学校名)
6. 
募集を知った媒体
7. 
応募の理由と道場への期待

返信はがきの宛名には、ご自分の氏名・住所をご記入の上、

152-8799

東京都目黒区目黒本町1-15-16 目黒郵便局・局留め

『ゴー宣道場』代表・小林よしのり、担当・岸端


まで、お送り下さい。

応募〆切平成25年10/2(水)必着です。


当選された方にのみ
当選通知を送らせて頂きます絵文字:記念日
(往復ハガキで応募された方は返信ハガキで、ネットから応募された方は
 当選メールでの通知となります。)

当選通知の送付は、応募〆切後になりますので、しばらくお待ち下さい絵文字:よろしくお願いします

皆様からの多数のご応募、お待ちしております絵文字:重要絵文字:晴れ

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

次回の開催予定

第117回

第117回 令和6年 5/25 SAT
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in大阪「週刊文春を糾弾せよ!」

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