ゴー宣ネット道場

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切通理作
2014.10.14 00:24

新しい科学と未来の話をしよう 

先日、評論家の宇野常寛さんと社会学者の古市憲寿さんのお話を伺って、

三十代と二十代で若手と言われる論客ですが、

お二人とも科学の未来について

前向きに語っておられたのが印象的でした。

 

そこで、古市さんが「ポスト工業化時代の夢が必要だ」

と言っているのが耳に残りました。

つまり、豊かなモノで溢れる社会や、

道具を万能とする事からの脱却は、

科学に対する否定的態度ではないという事です。

 

私はいま、ゴジラを生み出し、

日本のSF特撮映画の礎を築いた映画監督の

本多猪四郎の本を作っていますが、

奇しくもそこで見出したものと、

重なってきたような気がして、ワクワクさせられました。

 

ゴジラや、それ以前のモンスターであるフランケンシュタインは

科学実験で誕生し、

あたかもそれは行き過ぎた科学への

否定的発想から生まれたかのようですが、

本多監督の態度はそうではありませんでした。

 

たとえば公害もまた、

科学者によって指摘されてきた事に本多監督は意を留めます。

 

科学は常に作用(よき力)と反作用(害になる力)

があるものであり、反作用すらも克服して

前に進もうとする事そのものを

「科学的態度」だとみなしていたのです。

 

本多さんは晩年に至る十数年、

『影武者』『夢』など黒澤明監督の映画を

手伝うようになりますが、その一方で、

常に最新の科学事情に目を光らせ、

細胞治療や電磁波、宇宙理論の変革などを

SF映画に反映しようという

好奇心を持ち続けていました。

 

そして、若い人との対話を欠かしせんでした。

世界中の映画人やマスコミの人間が、

彼の自宅に会いに来ました。

 

その興味や発想の一部は、

今年公開されたハリウッド発の新しい

『ゴジラGODZILLA』とも重なります。

 

軍事戦略や超自然的態度(スピリチュアル)

のいずれにも偏ることなく、

自然災害の特性を見極め、

その中でいかに適切な行動を取るかといった

「科学的態度」が今度の『ゴジラ』の根底にあると

僕は思います。それは、オリジンである本多監督の

姿勢を引き継いでいけば、おのずと見出せるものです。

 

しかしその簡明な事にたどりつくまでに、

私自身、実に二十年もの間、

頓挫を繰り返しながら、

やっと今度の本を作ることが出来ました。

 

初代編集者であり、

いまは日本とアメリカをまたにかけて

映画評論家として活躍されている町山智浩さんにとって、

私という存在は、『宮崎駿の<世界>』で賞をもらおうと、

はたまた失恋して『失恋論』という本を書いたりしても、

そんなことは関係なく、

「あの本まだ?」と問いかける存在であり続けました。

 

その度に私は委縮し、時に逃げ回ってきましたが、

ようやく、物書きになって当初の約束を果たせたのか、

それとも、当初の期待を大きく裏切るものを、

二十年たって出してしまったことになるのか、

刊行開始時期の116・7日(木・金)19時から、

『本多猪四郎 無冠の巨匠』(洋泉社)の出版を記念し、

町山智浩氏と連続対談を致します(ユーロライブ渋谷)。

 

6日は本多猪四郎監督、

7日は宮崎駿監督がテーマです。

 http://eurospace.co.jp/eurolive/141010.html

 

「この映画を本多猪四郎に捧ぐ」

 巨大ロボットが怪獣と戦う映画『パシフィック・リム』

で、エンドクレジットの最後に出る献辞。

それは、2014年のハリウッド版『ゴジラGODZILLA』で

渡辺謙演じる博士の名前が「猪四郎」であった

ということと並んで、

日本の観客としては誇りに思ってもいい事だと思います。

けれど、それは日本人自身には何人に届いたでしょう?

 

SFを通して科学の夢を追う映画人にとって、

本多猪四郎は、

常に科学の最先端に目を配るSF映画の作り手であり、

ともに未来を語れる国際的な日本人でした。

 

そんな本多作品の戦争、怪獣、科学について

町山さんと語るとともに、

はたして本をどう受け止めて頂いたのか、

被告席に座る覚悟で参りたいと思います。

 

また今度のトークの一方のテーマは宮崎駿。

このテーマ設定は町山さんですが、

「お前は宮崎駿についてどれだけのものを書いてきたのか」

と突き付けられる、これも私にとっては

おそろしい回になるに違いありません。

 

宮崎作品は巨大な矛盾だと町山さんは言います。

「機械と大自然、光と影、浄めと穢れ、
生と死といった本来対立し、矛盾するものたちが、
作品を重ねるごとに葛藤しながら。
渦を巻き、絡み合っていく。
それはまるで監督の思索の過程を見るようだった。
それは普段の自己否定を通して、
『生きる』ことの肯定へと昇って行く
螺旋階段だったのではないか」

これは、ブルーレイの宮崎駿全集で
ジブリ公式の総論を書いた時の
町山智浩さんの文章からの抜粋です。

 

宮崎駿もまた、科学と人間、

人間を人間たらしめるものへの<大いなる矛盾>を

抱えた作家。その思索の過程に迫りたいと思います!

 

是非皆さん、いらしてください!

電話予約受付中です。

http://eurospace.co.jp/eurolive/141010.html

 

と今日は宣伝ですみません。

町山さんから「お前少しは宣伝しろよ。満員にしないと許さねえぞ!」

と叱られてますので……。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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