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笹幸恵
2019.12.24 09:51皇統問題

「よくわかる皇位継承論のツボ」について〈その4〉

『WiLL』2月号「よくわかる皇位継承論のツボ」、
百地章氏と竹内久美子氏の対談はもうムチャクチャだ。
第一弾は、小林先生とケント・ギルバート氏の対談について
感想を述べた。
以下は、百地氏と竹内氏の対談について言及している。
「よくわかる皇位継承論のツボ」〈その2〉
「よくわかる皇位継承論のツボ」〈その3〉

今回は、竹内氏の廃嫡発言と、
百地氏の憲法違反発言について述べておきたい。

竹内氏は、こう語っている。

女系天皇を誕生させたら、悠仁親王殿下は事実上、
廃嫡となります。

これは1月号で門田隆将氏が書いたらしいのだが、
手元にないので検証できない。
が、「廃嫡」という言葉は、旧民法で、
家督相続権をなくすことを指す用語であり、
皇族に対して使われる言葉ではない。
皇太子がいらした場合、何らかの事情で
継承順位が変われば「廃太子」となったが、
悠仁さまは皇太子ではないので、これも当てはまらない。

廃嫡という言葉には、ちょっとギョッとするような
強い響きがある。わざわざこの言葉を使うというのは、
男系男子に継承させないと大変なことになるぞ、
と暗に脅しているようなものだ。
もともとそんな概念すらないのに、あえて使って、
ビビらせて不安に陥らせる。
ビビらせ商法か?

ちょっと考えればわかることではないか。
男系男子でいえば、悠仁さまは皇位継承第2位。
女性や女系も可となれば、その順位が変わるだけの話。
「廃」しているわけでも何でもない。
竹内さん、ビビらせ商法を鵜呑みにするべからず。


そしてもう一つ、百地氏の驚くべき憲法違反発言。
具体的には、こんなやりとり。

百地 憲法制定以来、政府見解も憲法第二条の
「世襲」は「男系」ないし「男系重視」を意味するで
一貫しています。憲法制定時の内閣法制局「想定問答」では
「皇統は男系により統一することが適当であ(り)、
少なくとも、女系ということは皇位の世襲の観念の中には
含まれていない」とまで言っています。制憲議会でも
「世襲」の意味について、金森徳次郎憲法担当大臣(当時)は
「本質的には現行の憲法(明治憲法)と異なるところはない」と
答えていました(昭和二十一年)。
竹内 そうすると、女性天皇、女系天皇は
憲法違反ということですか。
百地 男系維持の努力もしないで、女系を認めて
しまうのは憲法違反だと思います。

どっひぇ~。
女系は憲法違反!!!
あらためて日本国憲法を確認してみよう。
【第二条】
皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した
皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

憲法には、男系男子が継承するなどとは定められていない。
これが定められているのは皇室典範だ。
女系も可とするなら、皇室典範の改正が必要となる。
ちなみに旧宮家の誰かを養子にする場合も、
皇室典範の改正が必要だ。
いくらなんでも、女系が憲法違反って、言いすぎだろう。
これもビビらせ商法の一種?

百地氏は、憲法制定時の内閣法制局の言を引用しているが、
あくまで「想定問答」として役人が作った文書であり、
これを公式な見解として取り上げるのは説得力を欠く。
このほか、金森徳次郎大臣の「本質的には現行の憲法と
異なるところはない」という発言も紹介しつつ、
女系は憲法違反だとしている。
実際、この文言と全く同じではないけれど、昭和21年、
世襲について言及している金森大臣の発言がある。

世襲とは男系男子のことなのか、帝国憲法と違うのか、
という主旨の質問に対し、
「其の趣旨は根本に於て異なるものありとは考へませぬ」
という発言だ。
〈第90回国会 貴族院 帝国憲法改正案特別委員会(昭和21年9月10日)〉

ざっくり口語訳すると、百地氏が言ったように
「本質的には現行の憲法(明治憲法)と異なるところはない」、
すなわち男系の男子で継承する、という意味になるだろう。

ところが、この発言の全文は・・・以下のとおり。


男系の男子と云ふことは第二條には限定してありませぬ、
其の趣旨は根本に於て異なるものありとは考へませぬけれども、
併し時代々々の研究に應じて或は部分的に異なり得る場面が
あつても宜いと申しますか、さう云ふ餘地があり得ると云ふ譯で
斯樣な言葉になつて居ります

帝国憲法改正案特別委員会の議事録
(※この議事録の発言ナンバー062をご覧ください)

憲法第二条には男系男子とは限定していない。
基本的に明治憲法と変わるところはないけれども、
時代に合わせて研究し、それに応じて異なる部分が
あってもよいというか、そういう余地があり得る、
と述べているのだ!

百地氏、いくらご都合主義とはいえ、
発言の一部を切り取って、全体の主旨とは
真逆の結論を導き出すとは、なんと悪質!!!
曲解も甚だしい。歴史に対する冒とくだ。
この方、どこぞの大学の教授などと名乗っていい人物なの?
知識人として雑誌に登場させていい人物なの?
安易に彼を使う雑誌も雑誌だ。良識はどこ行った。
つっこめばつっこむほど腹が立つ。
ノイジーマイノリティとは、まさにこのこと。
まったく迷惑以外の何ものでもない。

以上、対談のほかの細かい発言を取り上げたらキリがないので、
このへんで終わります。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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