ゴー宣DOJO

BLOGブログ
トッキー
2022.9.9 11:52メディア

池内恵氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?

「表現者クライテリオン」が7月号の巻頭コラム「鳥兜」で、「国際政治学者たち」が映画監督・河瀨直美氏に対して「ヒステリックな魔女狩り」を行っていると非難した件について、本当にそんな事実があったのかどうかを検証しております。

昨日は東京外国語大学の篠田英朗教授の発言を検証し、篠田氏は河瀨氏を「魔女狩り」などしていないということを明らかにしました。

本日扱う国際政治学者は、イスラム政治思想が専門の東京大学教授・池内恵(さとし)です。
河瀨氏があの問題の入学式祝辞を行った、当の東京大学の教授です!

その池内氏が、河瀨氏の祝辞が問題となった後に発信したツイートが、これです。

「通俗的な理解するとこうなるという例。新しい学生が変えていってください。」

「その場でウケのいいことを探して言うのは学問ではないと学生はこれから知るのです。」

つまり、あの祝辞はダメな例であり、学問とは言えない例だから、新入生諸君はこれから勉強して、こんな例が出てくる現状を変えていってくださいと言っているのです。
大学教員として、新たな学生に送っている言葉であり、
なんだか、これこそが本当の東大新入生への祝辞なんじゃないの?と言いたくなります。

しかも池内氏はさらに、ものすごく辛辣なことを言っています。

「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ないでしょう。」

自分の大学にここまで言うというのは、相当なことだと思います。
篠田英朗氏も東大批判をしていましたが、現役の東大教授がこんなにズバッと言っちゃったのには驚きました。

池内氏のツイッターには、東大があんなレベルの祝辞を述べさせた件について問うツイートも来ており、池内氏はそれに返答しています。
それをQ&A形式にして、私のコメントも交えていくつか紹介しましょう。

Q:いったい東大は、どういう意図で新入生にこの人の話を聞かせようと考えたのでせうか…

A:プーチンとロシア人全員を同一視しないのと同程度に、入学式の諸発言と東大の教員・学生全員を同一視しないでください。一つの問題の地続きであるという自覚はある。直接変える権限はないが、できることはある。

やっぱり、自分が属する東京大学でこんなことが起きたのには、忸怩たる思いがあるという感じが伝わってきます。
これが問題のある組織の一員として言える精一杯ではないでしょうか。自分と無関係のこととはせず、「直接変える権限はないが、できることはある」というところに誠意を感じます。
クライテリオンにいる若手の人にも、ぜひこういう意識を持ってほしいと願います。

Q:自分たちの国がどこかの国を侵攻する可能性がある(あるいはかつて実際に侵攻した)ことを「自覚」するとなんかいろいろあって「ロシアを責めるだけでいいのか」という結論になるという謎の理路、流行ってるんですかね。端的に意味が分からないと思うのですが。

A:自他の区別がついてないんですよね。近代的自我の確立が必要

そういや表現者クライテリオンも、「日本もかつて満州を侵攻した」から「ロシアを責めるだけでいいのか」みたいな「謎の理路」を振りかざしてましたね。そっか~、クライテリオンも自他の区別がついてないというわけですね。
クライテリオンにいる若手の人には、なんとしても近代的自我の確立をしてほしいと願います。

Q:河瀬直美の祝辞を全文読んだけれども、ロシアのウクライナ侵略についてのくだりは全く見識も何もないものでした。世の中には「一方的な悪」があるという現実を我々に突きつけたのがこの戦争だと思います。河瀬はその現実から目を背けています。
この祝辞でウクライナ侵略に言及する必要はなかった

A:むしろ他の部分がウクライナの言及への伏線になっているので、渾身の論説と思います。こういうふうに論じるものだと思い込んでいる人、インテリ業界では多いですよ。

質問者は、河瀨氏がウクライナについて踏み込んだのは「勇み足」みたいなもので、言及する必要はなかったんじゃないかと思っているのに対して、池内氏はそうではなく、河瀨氏は最初からロシア・ウクライナの戦争について「どっちもどっち論」が言いたくて、そのために他の部分を用意したものと見ています。そして、「インテリ業界」にはそういう人が多いのだといいます私も、池内氏に賛成です。
クライテリオンにいる若手の人には、決して「インテリ業界」の悪癖に染まらないでほしいと願います。

それにしても、河瀨氏の祝辞に関するこれらの池内氏の発言のどこに「ヒステリックな魔女狩り」をしているところがあるのでしょうか?
全然、ありません!

池内氏も篠田英朗氏と同じく、批判の主な対象は河瀨氏の低レベルな発言を「権威付け」してしまった東京大学です
河瀨氏の発言自体については、質問に答える形で「インテリ業界」にはそういう人が多いとやんわり言っている程度です。

これを「ヒステリックな魔女狩り」と言ったら、名誉毀損じゃないでしょうか?

なお、池内氏はツイッターで、
〈長くやっていると「入学式でまたくだらない騒動が起こるんだろうな…代替イベント用意しておこう」みたいな発想になるの良くない〉
と、ボヤキみたいなことも書いています。
東京大学教授として、こんなことを繰り返して「東京大学入学式」の権威が失われることは好ましくないと感じているようです。

さて、最後に河瀨氏の祝辞の件とは直接的には関係ないのですが、蛇足で池内氏のツイートをもうひとつご紹介。
池内氏は「表現者クライテリオン」を読んでいないと思いますが、まるで読んで書いたとしか思えないようなツイートをしていました。

あの7月号の大特集、これだけでほとんど全て言い尽くしてますよ!

クライテリオンにいる若手の人には、どうか、本当にこれでいいのか、自分の頭で考えてほしいと心から願います。

 

【ロシベタクライテリオン論破祭り】
第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?
第5回 NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?
第6回 確かにアメリカは悪い! けど…?
第7回 ロシア経済崩壊の「主犯」は誰か?
番外編 藤井氏動画コメントに見る、クライテリオン読者・支持者の「程度」
第8回 藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体
第10回 藤井聡氏に小学校の国語のテスト。
第11回 クライテリオンは朝日と産経の「悪いとこ取り」
第12回 ブチャ虐殺を「フェイク」だと思っていた藤井聡
第13回 「魔女狩り」という言論封じワード
第14回 もう一度、道交法と国際法の違いについて。
第15回 藤井聡氏の国際法軽視は西部邁氏の悪影響か?
第16回 明日よりクライテリオン論破祭り、最終章!
第17回 河瀨直美の祝辞はどう見ても「どっちもどっち論」「相対主義」(しかも日本絶対悪主義)だ!
第18回 篠田英朗氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?

トッキー

次回の開催予定

第117回

第117回 令和6年 5/25 SAT
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in大阪「週刊文春を糾弾せよ!」

INFORMATIONお知らせ