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笹幸恵
2023.5.1 09:23皇統問題

倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【最終回】

倉山満『皇室論』。
明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。
もう絶望的な支離滅裂さ(もう皆、知悉しているけども)。
17回目となる今回は、一応の最終回。
しっかし最後まで、もれなくデタラメだよ。

「伏見宮系の男系男子に親王宣下していただくべき」という
倉山の主張に対する、5つの批判。

1)先例にない。
2)旧皇族は生まれた時から民間人で既に七十年経っている。
3)皇籍取得を望む旧皇族などいないのではないか4)人権問題が発生する。門地による差別となるのではないか。
5)旧皇族は伏見宮家の子孫であり、現在の皇室からは血縁が遠い。

このうち、
5)旧皇族は伏見宮家の子孫であり、現在の皇室からは血縁が遠い。
について見ていこう。
倉山は「血縁が遠いのは事実」と述べている。
なら、それで話は終わりじゃん。

・・・・・・とならないのが、倉山。

なぜか小室圭さんの例を出す。

昨日まで「小室圭さんに皇族になっていただきたい。
小室さんに限らず、内親王殿下にはお望みの方とご結婚いただき、
そのお子様には皇族となり皇位を継いでいただきたい」
などと言っていた議論と比較する、相対評価だと
どちらに理があるのか。
仮に伏見宮系統の方々が現在の皇室から遠いとはいえ、
皇室と何の縁もゆかりもない一般国民が皇族になって良いのか。


出たッ、最後の最後まで論点のすり替え!!!

一般国民が婚姻によって皇族になることと、
一般国民がその血統ゆえに皇族になること、
倉山はその区別がついていない。

「一般国民が皇族になるくらいなら、
伏見宮系統がなったっていいじゃん!!!」

と言っているのである。

同列に語れると思い込んでいるのなら、
バカすぎてまったくお話にならない。
あえてすり替えをおこなっているのなら、
あまりに低レベルのごまかしとしか言いようがない。

いいですか、
「小室さんに皇族になっていただきたい」
というのは、男性皇族のお相手は婚姻によって
皇族となれるのだから、女性皇族のお相手だって
婚姻によって皇族になったっていいじゃない、
なぜ女性皇族だけが皇室を離れなければならないの?
という、ごく自然な庶民感情の表れだ。

男尊女卑ではないんですか?
それを問うている。

普通の国語力があれば、旧宮家系男系男子の皇籍取得とは
まったく別の話だということがわかる。
だってこちらは血統の話だから。
比較の対象にはならないのだ。
したがってこれを比較した上での
「皇室と何の縁もゆかりもない一般国民が
皇族になって良いのか」という倉山の問いも、
そもそも成立しない。

もっとも、伏見宮系の人々も今は一般国民だけどね。
倉山はそこのところも理解できていないから、
手の施しようがないのだけど。

結局、「伏見宮系統は現在の皇室からは血縁が遠い」という
批判に対して、ワケのわからんすり替えを行って終わり。
これで何かを言ったつもりでいるなら、かなり笑わせる。

そしてこの章のまとめとして、
倉山は次のように言っている。

悠仁さまに何かあったときのために、
愛子さまを旧皇族と結婚させよ!
そしてお子様が生まれれば、その方こそ、
悠仁さまのあとの皇位継承者としてふさわしい!!!

倉山に言わせれば「愛子さまにも恋愛結婚の自由がある」
というのは偽善なんですと。

せめて、そのぐらいのお望みは叶えてさしあげたい、
そう思う民の心は、倉山にはわからないらしい。



さて、本書を通して倉山の言いたいことは、
自分の知識自慢のほかに、次のふたつ。

悠仁さまには勉学よりもお世継ぎを。
愛子さまには旧宮家系の男系男子との婚姻を。

皇族の人間としての心を一切認めない、
「やっていただいている」という謙虚さのカケラもない。
これまで皇室にあれやこれや「諫言」などという名目で
好き勝手を言ってきた自称保守連中と同じ、
思い上がりも甚だしい。

そして日本の歴史を守るためなどと言いながら、
先例だの伝統だのと、それも自分にとって
すこぶる都合のよい解釈と論点のすり替えで
「ボクの理想の皇室」を押しつけている。
それこそが日本の歴史を崩壊させるかもしれないというのに。
政治的な発言もできない、公的に反論もできない
天皇や皇族に対して、それが本当に尊皇心のある国民の
とるべき態度か?

私が言いたいことはただひとつ。

甘ったれるのもいい加減にしろ。


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笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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